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承認の量的緩和が日本を救う

それでも3人は崖を登る――インドア派アイカツ!オタクのための超アウトドア映画「MERU」案内

映画 アイカツ

はじめに

昨年の大晦日、本邦に一本の映画が上陸しました。その名は「MERU」。ヒマラヤ山脈のメルー峰にある未踏の難所「シャークスフィン」の初登頂を巡るドキュメンタリー映画です。

本エントリではこの映画「MERU」をアイカツ!が好きなオタクのお友達に宣伝します。
※ネタバレは極力抑えるつもりでしたが、気付いたら全開な感じになっていました。見たくなったら興味を持った段階で切り上げて見てください。

「崖登りだからアイカツ!だ」とか言うつもりはない

アイカツ!といえば斧と崖登りということで、またぞろ安直なオタクが騒ぎ出したぞと言われる前にこういうことは言っておきます。但し私個人は運動もしんどいのも嫌いなオタクなので、「崖登り映画でしょ? 実質アイカツじゃーん(ヘラヘラ」みたいな感想を垂れたいという動機で見たことは白状しておきます。

3人組の力

この映画は以下の3人からなるクライミングチームと、それを取り巻く人々で成り立っています。

  • 経験豊かなリーダー、コンラッド・アンカー
  • 本作の監督も務めるクライミング撮影家、ジミー・チン
  • ヒマラヤ経験は浅いながら、命綱なし崖登りのなどの実績があり知識も申し分ない一番の若手、レナン・オズターク

3人のチームというのはアイカツ!のチーム構成の基本と言っていいでしょう。シャークスフィンはシェルパを雇えるような崖ではないため、全てのリスクと荷物はこの3人で共有し、3人の仲間の中で決めなくてはなりません。クライミング中の映像は全て、彼らのセルフィーです。

ライミングは理詰めで行う

メルー峰のシャークスフィンは過去何人ものクライマーに登頂を諦めてさせてきた未踏の崖です。殆ど足もかけさせてくれないほぼ垂直の崖、人間の体重で何トンもの岩が揺れる不安定な土台、運が悪ければ数日間テントで足止めされる嵐が重なり、「世界で一番難しい崖」と呼ばれています。今まで挑んできたクライマー達は装備の軽量化を図り速攻する戦略を採りますが、今回の部隊は天候の影響を抑えるべく長期戦で戦略を練ります。他にも登攀ルートの策定、食事の配分など、山は考えることに溢れています。

クライマー達の「SHINING LINE*」

クライマーには「師」と「パートナー」がおり、これはアイカツ!で例えれば星宮いちごにおける神崎美月とソレイユ、大空あかりおける星宮いちごとルミナスがそれぞれ該当します。アイカツ!がアイドル達の継承の物語であるのと同じように、「MERU」も登山家達の継承の物語なのです。登山家は親から「私より先に死ぬなよ」と強く言い含められる程に危険な職業ですから、師もパートナーもそから自分も常に死と隣り合わせです。実際、今回の登攀チームのリーダーであるコンラッドも師やパートナーを山で亡くしているのです。山を教えてくれた師と、まさに「二人なら最強」のパフォーマンスを出せたパートナーの死、それを越えてもコンラッドは山に挑むのです。

山を巡る狂気

コンラッドのチームは一度、シャークスフィン登頂を目指し、あと100メートルが登れずに挫折します。そのとき、別のチームからシャークスフィン登頂のための情報提供を打診され承諾した彼はこう漏らします。「これで成功すれば、もう行かなくてすむ」。このチームが失敗し、再度計画を立てている最中、クルー達が相次いで山に命を奪われかけます。特に最年少のレナンは歩けなくなる一歩手前の怪我を負い、登山仲間達からは共に登攀することを強く反対されます。それでも彼らは向かいます、一度目と同じ3人のチームで。理詰めで始められた登攀は、最後には山が呼び起こす狂気によって達成されるのです。

終わりに――崖を登るのはやっぱりアイカツ!だったよ

最初に「『崖登りだからアイカツ!だ』とか言うつもりはない」と宣言してこの話をするのは恐縮ですが、思えばエンジェリーマウンテンの崖登りも危険なものだとは作中ではっきり言及されている(その上エレベーターもちゃんと存在する)ものでした。星宮いちごは(エレベーターがあることを知らなかったからですが)崖を登り、大空あかりは(エンジェリーシュガーでもないのに)崖を登り、天羽まどかは(エレベーターがあることを知りながら)崖を登ってプレミアムドレスを獲得していきます。他にもキュートタイプドレスのブランドがある中でなぜ彼女達は崖を登るのか。それはアイカツ!が己の全存在を賭け金にした博打を闘っていくゲームであり、彼女達がその虜になっているからに他なりません。

そしてまた、MERUの3人も己の全存在を賭けたゲームに魅せられ、理性と狂気の狭間で山を目指します。何のためかは名状できない何かのために。